住宅ローン、年収の何倍まで借りていい?元銀行員の本音

借入金の判断

住宅ローンを組むとき、「年収の何倍まで借りていいのか」で悩む方は多いと思います。

ただ、ネットでよく見る「年収の5〜7倍」という目安を、そのまま自分に当てはめるのは少し危険です。

なぜなら、その数字はあくまで銀行が「貸せる金額」の目安であり、あなたが無理なく「返せる金額」とは別物だからです。

私は銀行で5年間、住宅ローンや投資信託の審査・提案を担当していた、いわば「貸す側」にいた人間です。

この記事では、銀行が貸出額をどう決めているかという実務の視点から、年収別の借入目安と、その数字だけに頼らない考え方をお伝えします。

読み終える頃には、世間の相場に振り回されず、ご自身の家計に合った借入額を自分の言葉で判断できるようになるはずです。

大切なのは「年収の何倍か」という数字そのものより、その数字とどう向き合うかという考え方だと私は思っています。

世間で言われる「年収の5〜7倍」という目安

まず知っておきたい「年収倍率」の目安

住宅ローンに関する情報を調べると、「借入額は年収の5〜7倍が目安」という数字によく出会います(2026年7月時点でも、多くの解説記事で紹介されている考え方です)。

これは、年収に対して無理のない返済額に収まりやすいとされる、ざっくりとした目安として使われています。

例えば年収500万円であれば2,500万〜3,500万円、年収600万円であれば3,000万〜4,200万円程度が、この計算式に当てはめたときのイメージです。

実際に公的な調査データでも、平均的な借入額はこの範囲に収まることが多く、まったく的外れな数字というわけではありません。

だからこそ多くの人が、まずこの倍率を基準に「自分はいくらまで借りられそうか」を考え始めます。ただ、この数字はあくまで平均や目安であり、一人ひとりの家計事情を反映したものではない、という点は頭の片隅に置いておく必要があります。

年収別に見る「何倍」のイメージ

目安となる倍率を使うと、年収ごとのイメージはこのようになります。

年収世間の目安(5〜7倍)元銀行員の私なら
400万円台2,000万〜2,800万円下限寄り(5〜6倍)から検討
500万円台2,500万〜3,500万円6倍程度までを一つの目安に
600万円台3,000万〜4,200万円「返していきたい額」を基準に

年収450万円なら2,250万〜3,150万円、年収500万円なら2,500万〜3,500万円、年収600万円なら3,000万〜4,200万円という具合です(金利や返済期間によって変わるため、あくまで目安です/2026年7月時点の一般的な考え方)。

子育て世代の場合、世帯年収450〜600万円台というご家庭が多く、この計算式に当てはめると「3,000万円前後」という数字が一つの目安として見えてきます。

ここで大事なのは、この数字を見て「借りられそう」と感じるか、「思ったより多い、あるいは少ない」と感じるか、ご自身の感覚と照らし合わせてみることです。

次の章では、この目安の裏側で、銀行が実際にどうやって「貸せる金額」を計算しているのかを、売っていた側の視点でお話しします。

銀行が「貸せる額」をどう決めているか

審査で銀行が見ているもの

金融機関(ネット銀行や地方銀行など)が住宅ローンの審査で重視する指標の一つに、「返済負担率」があります。

これは、年収に対して年間の返済額がどのくらいの割合を占めるかを示す数字で、一般的には年収に応じて25〜35%程度までを上限の目安とする金融機関が多いです(2026年7月時点)。

この数字だけを見ると「思ったより借りられる」と感じる方が多いのではないでしょうか。

実際、私が窓口に立っていた頃も、この計算式に基づいて「この金額まで借りられますよ」とお伝えする場面が何度もありました。

ただし、この返済負担率には、教育費や保険料、日々の生活費といった、お子さんがいるご家庭ならではの支出は基本的に含まれていません。

あくまで「返済額と年収の比率」だけを見た、機械的な計算だという点は、知っておいていただきたいところです。

銀行は「貸せるギリギリ」まで提示してくる

これは元銀行員として、正直にお伝えしておきたい本音です。

銀行は基本的に、審査上「貸せる」と判断した金額の上限に近い数字を提示してくることが多いです。

これは銀行が悪いというより、審査の仕組み上、返済負担率などの基準を満たしていれば「貸せる」という判断になるためです。

住宅ローンは銀行にとって収益の柱の一つでもあるため、基準を満たしたお客様には、できるだけ希望に近い金額、あるいはそれ以上の金額を案内する動きになりやすい、というのが実務の実感です。

だからこそ、審査を通った金額や、銀行から提示された金額を見て「ここまで借りられるんだ」と、そのまま鵜呑みにしてしまうのは少し危険です。

次の章でお話しする「貸せる額」と「返せる額」の違いを理解しておくことが、後悔しない借入額を決めるための一つの鍵になります。

「貸せる額」と「返せる額」は違う

審査に通った金額が、そのまま正解ではない

ここが、この記事で一番お伝えしたい核心の部分です。銀行の審査に通った金額は、「銀行が貸してもよいと判断した金額」であって、「あなたの家計が無理なく返していける金額」とは、必ずしも一致しません。

前の章でお話しした返済負担率の計算には、お子さんの教育費や成長に伴って増えていく生活費、将来の車の買い替えや冠婚葬祭費といった、暮らしの中で当たり前に発生する支出が含まれていないためです。

特に、お子さんが小さいご家庭の場合、これから教育費が本格的に増えていく時期と、住宅ローンの返済がずっと続く時期が重なります。

審査上の数字だけを見て「ここまで借りられる」と判断すると、数年後に家計が想定より苦しくなる、という状況につながりかねません。

返済負担率を「手取り」で考えてみる

銀行の審査では、返済負担率を額面年収(税金や社会保険料を引く前の年収)を基準に計算することが一般的です(2026年7月時点)。

ですが、実際に毎月の返済を行うのは、税金や社会保険料が引かれたあとの「手取り収入」からです。

同じ返済負担率30%でも、額面年収で計算した場合と、手取り年収で計算した場合とでは、家計の余裕感がまったく違ってきます。

私自身、家計の相談を受ける中で、「審査には通ったけれど、実際に返済が始まってから思ったより苦しい」という声を聞くことが少なくありませんでした。

借入額を検討する際は、額面年収ではなく、手取り収入をベースに、毎月いくらまでなら無理なく返済に回せそうか、という生活実感からの逆算を、一度試してみることをおすすめします。

年収別に見る、借入額の目安

年収400万円台の場合

年収400万円台のご家庭の場合、世間の目安である年収の5〜7倍で計算すると、2,000万〜2,800万円程度が一つの範囲になります(2026年7月時点の一般的な考え方)。

ただ、これから教育費が増えていくお子さんがいるご家庭であれば、私なら倍率の下限に近い、年収の5〜6倍程度を、まず検討の出発点として考えます。

上限に近い金額まで借りると、返済負担率の計算上は問題なくても、教育費が本格化するタイミングで家計にゆとりが少なくなりやすいためです。

もちろん、共働きで今後も世帯年収の増加が見込める場合など、家庭ごとの事情によって適切な水準は変わってきます。

あくまで一つの目安として、ご自身の家計と照らし合わせながら参考にしていただければと思います。

年収500万円台の場合

年収500万円台の場合、目安の計算では2,500万〜3,500万円程度が範囲になります(2026年7月時点)。

世帯年収450〜600万円台の子育て世代の方の中でも、多くの方がこのあたりに当てはまるのではないでしょうか。

私なら、この年収帯であっても、上限いっぱいまで借りるかどうかは慎重に考えたいところです。

特に、住宅ローン以外に自動車ローンなど他の返済がある場合や、これから複数のお子さんの教育費が重なっていく見込みがある場合は、倍率でいうと6倍程度までを一つの目安として、そこから先は家計のシミュレーションをしっかり行った上で判断することをおすすめします。

年収600万円台の場合

年収600万円台の場合、目安の計算では3,000万〜4,200万円程度が範囲になります(2026年7月時点)。

この年収帯になると、審査上はより高い金額まで借入可能と判断されるケースも増えてきます。

ただし、年収が上がるほど税金や社会保険料の負担も増えるため、額面年収の増え方ほどには手取りが増えていない、という実感を持つ方も少なくありません。

私であれば、この年収帯でも「借りられる金額」と「返していきたい金額」を分けて考え、後者を基準に借入額を決めることをおすすめします。

あくまでこれは元銀行員としての一つの考え方であり、正解はご家庭ごとに異なるという前提で、参考にしていただければと思います。

元銀行員の私も、いま悩んでいます

実は今、まさに住宅ローンを検討している当事者です

ここまでお話ししてきましたが、実は私自身、今まさに住宅ローンを組もうとしている当事者です。

もともと私は、節約や投資で資産形成をしてきた人間で、正直なところ貯めてきた資産以上の「借金」をすることは、これまでの自分の信念とは逆の道を選ぶことになるのではないか、とかなり葛藤しています。

土地についてはすでに決まっており、これから建物の見積もりを進めていく段階です。

事前審査は通ったのですが、審査で出た金額と、自分の生活実感として「これなら無理なく返していける」と思える金額との間に、正直まだギャップを感じています。

元銀行員でも、答えが一つに決まるわけではない

「銀行の中身を知っている元銀行員なら、こういう判断に迷わないだろう」と思われるかもしれませんが、実際には、審査の仕組みを知っているからこそ余計に慎重になっている、というのが正直なところです。

教育費がこれから本格的にかかってくる時期と、住宅ローンの返済期間が重なることも分かっていますし、投資を続けながら借入もしていくバランスをどう取るかも、まだ自分の中で答えが出ていません。

この記事で、何か明確な正解をお伝えできれば良かったのですが、正直なところ、プロの立場にいた人間でも悩む、というのが実態です。

だからこそ、世間の目安の数字だけに頼らず、ご自身の状況に合わせて考えることが大切なのだと、あらためて感じています。

まとめ

「住宅ローンは年収の何倍まで」という数字は、あくまで検討を始めるための出発点にすぎません。

銀行の審査に通った金額が、そのまま「返せる金額」を意味するわけではなく、教育費や生活費、手取り収入といった、ご自身の家計の実感に基づいて判断することが何より大切です。

年収別の目安をこの記事でお伝えしましたが、最終的にどこまで借りるかを決めるのは、世間の相場でも銀行の提示額でもなく、あなた自身です。

この記事が、数字に振り回されず、ご自身の家計と向き合う一つのきっかけになれば嬉しく思います。

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