はじめに
「年収400万円で、この先マイホームを持って本当に大丈夫だろうか」と、不安を感じている方は多いのではないでしょうか(ここでの年収は額面ベースの話です)。
ネットでよく見る「年収の5〜7倍」という目安を、そのまま自分の借入額の基準にしてしまうのは少し危険です。
なぜならその数字は、銀行が「貸せる額」の目安であり、あなたが無理なく「返せる額」とは別のものだからです。
私は銀行で5年間、住宅ローンなどの融資審査・提案を担当していた、いわば「貸す側」にいた元銀行員です。
この記事では、年収400万円という具体的な数字をもとに、無理なく返せる額の考え方を詳しくお伝えします。
読み終える頃には、ご自身の家計に合った「返せる額」のイメージが、より具体的に見えてくるはずです。
大切なのは世間の目安ではなく、ご自身の家計の実感に基づいて判断することだと私は思っています。
年収400万円の「借りられる額」の目安
世間の目安「年収の5〜7倍」で計算すると
住宅ローンの目安としてよく紹介される「年収の5〜7倍」という計算式に、年収400万円を当てはめると、2,000万円〜2,800万円程度という金額が出てきます(2026年8月時点の一般的な考え方です)。
これは、多くの解説記事や住宅ローンの相談窓口でも紹介される、いわば「相場」に近い数字です。
実際、公的な調査データでも、年収400万円台の世帯の平均的な借入額は、このレンジに収まることが多いようです。
ですから、この数字自体がまったくの的外れというわけではありません。
ただし、この目安はあくまで平均値であり、教育費の状況や他の借入の有無など、一人ひとりの家計事情を反映したものではない、という点は頭の片隅に置いておいていただきたいところです。
審査では、目安以上に借りられることもある
実際に金融機関の住宅ローン審査を受けると、この「5〜7倍」という目安よりも高い金額まで、借入可能と判断されるケースは珍しくありません。
これは、審査で重視される「返済負担率」(年収に対する年間返済額の割合)について、一般的に年収の25〜35%程度までを上限の目安とする金融機関が多く(2026年8月時点)、この基準だけで見ると、5〜7倍を超える金額でも「貸せる」という判断になりやすいためです。
私自身、窓口に立っていた頃、審査上の上限に近い金額をご案内する場面が何度もありました。
ですが、この数字はあくまで「銀行が貸してもよいと判断した金額」であり、そのままご自身にとっての「無理なく返せる金額」を意味するわけではない、という点には注意が必要です。
でも「借りられる額」と「返せる額」は違う
返済負担率は「手取り」で考えてみる
銀行の審査では、返済負担率を「額面年収」、つまり税金や社会保険料が引かれる前の年収をもとに計算するのが一般的です(2026年8月時点)。
ですが、実際に毎月の返済を行うのは、そこから税金や社会保険料が差し引かれたあとの「手取り収入」からです。
額面と手取りには一定の差があり、額面をもとにした返済負担率の数字だけを見ていると、実際の家計の余裕感とはズレが生じやすくなります。
同じ「返済負担率30%」という数字でも、額面ベースで見た場合と、手取りベースで見た場合とでは、毎月の家計の余裕感がまったく違ってくるというのが、窓口で相談を受けていた頃の実感です。
借入額を検討する際は、額面年収ではなく、手取り収入をベースに、毎月いくらまでなら無理なく返済に回せそうか、という生活実感から逆算してみることを、私はおすすめしています。
教育費や生活費は、審査に含まれていない
銀行の返済負担率の計算には、お子さんの教育費や、成長に伴って増えていく生活費、将来の車の買い替えや冠婚葬祭費といった、暮らしの中で当たり前に発生する支出は基本的に含まれていません。
あくまで「年間の返済額」と「年収」の比率だけを見た、機械的な計算です。
特に、お子さんが小さいご家庭の場合、これから教育費が本格的に増えていく時期と、住宅ローンの返済がずっと続く時期が重なります。
年収400万円台のご家庭では、教育費や生活費が家計に占める割合が相対的に大きくなりやすく、審査で「借りられる」と判断された金額と、実際に無理なく回していける金額との間にズレが生まれやすい傾向があります。
だからこそ、審査上の数字だけを鵜呑みにせず、将来の支出も含めて考えておくことが大切だと感じています。
年収400万円で「無理なく返せる額」の考え方
元銀行員なら、まず5〜6倍を出発点に考えます
これは元銀行員としての、あくまで一つの考え方ですが、年収400万円のご家庭であれば、私なら世間の目安である5〜7倍のうち、下限に近い5〜6倍程度、金額にして2,000万円〜2,400万円あたりを、まず検討の出発点として考えます(2026年8月時点の試算)。
上限に近い金額まで借りると、審査上は問題なくても、教育費が本格化するタイミングで家計にゆとりが少なくなりやすいためです。
もちろん、共働きで今後も世帯年収の増加が見込める場合や、お子さんの人数、他に返済中のローンがあるかどうかによって、適切な水準は変わってきます。
あくまで一つの目安として、ご自身の状況と照らし合わせながら参考にしていただければと思います。
借入金の目安
| 倍率 | 借入額の目安(2026年8月時点) |
|---|---|
| 世間の目安(5~7倍) | 2,000万~2,800万円 |
| 元銀行員の目安(5~6倍) | 2,000万~2,400万円 |
年収400万円・借入額別の月返済額
| 借入額 | 月返済額(変動1.0%) | 月返済額(固定3.29%) |
|---|---|---|
| 2,000万円 | 56,457円 | 80,243円 |
| 2,400万円 | 67,748円 | 96,291円 |
| 2,800万円 | 79,039円 | 112,340円 |
「毎月いくらまでなら返せるか」から逆算する
借入額を考えるとき、「年収の何倍まで借りられるか」という発想だけでなく、「毎月いくらまでなら、無理なく返済に回せるか」という発想から逆算してみることも大切です。
具体的には、今の家賃や住居費に加えて、毎月無理なく出せそうな金額を洗い出し、そこから借入可能な金額を試算してみる方法です。
この方法であれば、教育費や日々の生活費といった、審査には反映されない支出も含めて考えることができます。
ボーナスに頼った返済計画になっていないか、今後お子さんの教育費が増えるタイミングと返済期間が重なっていないかも、あわせて確認しておきたいポイントです。
年収400万円という数字だけを見て判断するのではなく、ご自身の家計の中で「実際に払い続けられる金額」がいくらなのかを、具体的にイメージしてみることをおすすめします。
今は「返せる額」をより慎重に考えたい局面
フラット35の金利は、上昇局面にあります
ここで、今の金利の局面についても触れておきます。
住宅金融支援機構が公表している「フラット35」の金利は、2026年8月時点で年3.29%となり、現行の金利体系になって以降で最も高い水準です(前月2026年7月は3.14%でした)。
固定金利は近年、緩やかな上昇傾向が続いており、この動きは今後も注視しておく必要がありそうです。
ネット銀行や地方銀行が扱う変動金利についても、各金融機関の情勢によって水準が見直される場合があり、固定・変動それぞれの動向を借入前に確認しておくことをおすすめします。
もちろん、金利は今後の経済情勢によって変動するものであり、この記事の数字がそのまま今後も続くとは限りません。
ただ、「借入を検討している今」がどのような金利局面にあるのかを知っておくことは、無理のない返済額を考えるうえで、一つの材料になると思います。
同じ借入額でも、返済の重みが増しています
金利が上昇すると、同じ借入額であっても、毎月の返済額は以前より重くなります。
例えば2,000万円を借りる場合でも、金利が0.1%上がれば、返済期間全体で見た総返済額には、決して小さくない差が生まれます。
以前に試算した返済額のイメージのまま検討を進めてしまうと、実際に借入をする時点での返済額とズレが生じることもあるため、最新の金利で改めて試算し直しておくことをおすすめします。
年収400万円台のご家庭は、家計の中で住宅ローンの返済額が占める割合が相対的に大きくなりやすいため、こうした金利の変化の影響を受けやすい立場にあるとも言えます。
だからこそ、今の局面では、世間の目安の数字をそのまま当てはめるのではなく、今の金利で試算した返済額をもとに、ご自身の家計で無理なく続けられるかどうかを、より慎重に考えていただきたいと思っています。
返せる額と、実際に必要な額のギャップ
今の相場では、土地込み3,800万円以上が一つの目安
ここまで「無理なく返せる額」についてお伝えしてきましたが、実際に家を建てるとなると、今の住宅相場も無視できません。
2026年時点では、注文住宅を土地込みで建てる場合、総額3,800万円〜4,800万円程度が一つの目安として語られることが増えています。
背景には、人件費や木材価格の高騰(いわゆるウッドショック以降の影響)、円安による輸入資材価格の上昇、そして2025年4月から新築住宅に義務化された省エネ基準への適合(断熱材や窓の高性能化など)によるコスト増があると言われています。
こうした要因が重なり、以前よりも建築費そのものが上がっている、というのが今の相場感です。
「返せる額」と「必要な額」の間に生まれるギャップ
この記事の中で、年収400万円のご家庭が無理なく返せる額として、2,000万円〜2,400万円という目安をお伝えしました。
一方で、今の新築注文住宅の相場は、土地込みで3,800万円〜という水準です。こうして並べてみると、「返せる額」と「今の相場で必要になる額」との間には、決して小さくない開きがあることが分かります。
つまり、無理なく返せる範囲だけで、希望通りの新築注文住宅を建てるのは、年収400万円台では簡単ではないというのが、今の現実です。
世間の相場や周りの家の話を聞くと、つい「自分たちも同じくらい借りて当然」と感じてしまいがちですが、その相場感と、ご自身が無理なく返せる額とは、まったく別の物差しだと捉えておく必要があります。
この事実から目をそらさず、まずは正直に受け止めておくことが、この先の判断において大切だと私は考えています。
ギャップをどう埋めるか、3つの現実的な選択肢
このギャップとどう向き合うか、元銀行員として考える現実的な選択肢を3つご紹介します。
・1 自己資金(頭金)を厚くする
ただし、数百万円から1,000万円を超えるような頭金を用意できるご家庭は多くなく、誰にとっても現実的な方法とは限りません。
・2 中古住宅を検討する
実際、建築費の高騰を受けて予算がオーバーしてしまい、中古戸建てへと選択肢を広げる動きが増えていると感じています。
・3 価格を抑えた建売住宅を視野に入れる
注文住宅にこだわらなければ、コストを抑えた選択肢も見えてきます。どれが正解ということではなく、「返せる額」を軸に、住まいの形の方を柔軟に調整していくという発想が、今の時代には必要になってきているのではないでしょうか。
元銀行員の私も、いま同じように悩んでいます
正直に言うと、私は読者の方より年収が少し上です
ここで一つ、正直にお伝えしておきたいことがあります。
私自身の年収は額面500万円、手取りでいうと400万円ほどです。
つまり、この記事を読んでくださっている「額面年収400万円」の方と比べると、私は年収でいうと少しだけ高いということになります。
現在、土地込みで3,500万円ほどの借入を検討していて、事前審査には通ったものの、「本当にこの金額を無理なく返していけるのか」と悩んでいるのが正直なところです。
妻の手取り年収200万円も返済の支えとして見込んではいますが、住宅ローンを連名(ペアローン)にする選択はしていません。
ただ、私の場合は妻の手取りも返済の支えとして見込んでいるため、世帯の手取りで見ればおおむね目安の範囲に収まります。
それでも、私一人の収入だけで見れば年収の7倍近くになり、この判断で本当によいのか、迷いがあります。
年収面で私より一段厳しい条件にある年収400万円台の方は、私以上に慎重に金額を考える必要があると、当事者として痛感しています。
元銀行員でも、答えが一つに決まるわけではない
「銀行の中身を知っている元銀行員なら、こういう判断に迷わないだろう」と思われるかもしれませんが、実際には、審査の仕組みを知っているからこそ、余計に慎重になっているというのが正直なところです。
銀行員時代、無理な住宅ローンを組んで返済ができなくなり、夢のマイホームを泣く泣く手放したお客さまを何人も見てきました。
また、もともと私は、節約や投資で資産形成をしてきた人間で、貯めてきた資産以上の「借金」をすることに、正直なところかなり葛藤しています。
教育費がこれから本格的にかかってくる時期と、住宅ローンの返済期間が重なることも分かっていますし、投資を続けながら借入もしていくバランスをどう取るかも、まだ自分の中で答えが出ていません。
この記事で、何か明確な正解をお伝えできれば良かったのですが、正直なところ、審査の仕組みを知っている立場にいても悩む、というのが実態です。
だからこそ、世間の目安の数字だけに頼らず、ご自身の状況に合わせて考えることが大切なのだと、あらためて感じています。
まとめ
この記事では、年収400万円というご自身に近い数字をもとに、無理なく返せる額の考え方をお伝えしてきました。
世間の目安である「年収の5〜7倍」という数字も、審査に通った金額も、そのまま「返せる額」を意味するわけではありません。
手取り収入や教育費、今の金利水準といった、ご自身の家計の実感に基づいて判断することが、何より大切です。
最終的にどこまで借りるかを決めるのは、世間の相場でも銀行の提示額でもなく、あなた自身です。
この記事が、数字に振り回されず、ご自身の家計と向き合う一つのきっかけになればうれしく思います。




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